熱処理には、様々な用途や工法があり、ここでは、こだま製作所で板バネや接点などに使われる熱処理についてご紹介します。まず、熱処理を行う際の基準となる硬さの数値についてです。弊社に依頼される製品では、ビッカース硬さ(HV)とロックウェル硬さ(HRC)が主に使われています。他にもあるのですが、これらの名称の違いは、硬さを測定する試験機の違いです。それぞれ、測定方法が違うため、変換表などをもとに変換が必要となります。
※熱処理を行った場合、処理方法により大小様々ですが、変形が伴います。
加工方法についての技術情報
焼入れ焼戻し
炭素鋼などを赤熱させて、油や水などで急冷させ硬度を上げることを焼入れと言います。焼入れ処理を行うことにより、高い硬度が得られ、耐摩耗性が向上します。しかし、焼入れにより、硬度を上げると靭性が下がり脆くなり、不安定な状態となっているため、ある温度に再度加熱させ焼戻し処理を行い、靭性を高めます。焼入焼戻しは調質とも言われます。
焼もどし
焼もどしは、金属材料を適当な温度に加熱し、炉冷する熱処理です。加工工程で、加工硬化や残留応力が発生しているので、焼なましによって金属組織の格子欠陥が減少し、再結晶が行われるので組織が均質化し残留応力も減少するため軟化する。こだま製作所では、軟化させるためのものよりも、残留応力を除去するためのものがほとんどです。残留応力を取るための焼なましを低温焼なましと言い、低温焼なましによって一番変化が起こるのは弾性限、次いで耐力で、弾性限・耐力が増大するということは板バネがヘタリにくくなります。SUS系の板ばねの熱処理として行われますが、ほとんどの場合、コスト面から処理無しで使われています。
固溶化熱処理
基本金属に加えられた合金元素の溶けこみかたは、一般に温度が高くなるとともに大きくなります。そこで、ある合金成分である温度以上に加熱すると、低温では析出していた元素、化合物などが 多く溶けこみます。それを急冷すると、ふつうでは析出するはずのものが溶けこんだ(固溶した)ままになります。このように、合金元素をムリに溶けこませたままにする処理を「固溶化処理」とい います、ステンレス鋼 のオーステナイト系のものは、JISでも固溶化熱処理をしたもので機械的性質をきめています。これは、含まれている0.1%前後の炭素Cがクロム炭化物 CrazC6と して析出するために、そこから腐食が起きるのを防ぐためです。炭素は800°C以上で急速に溶けこみ、 1000°C以上では約0.1%固溶化するので、JISでも1,000°C前後の固溶化熱処理することをきめています。
この固溶化処理のことを、非鉄金属(主としてアルミニウム合金)では「溶体化処理」といってい ます。同じことにちがった用語があるのです。いや、そればかりではなく、この「溶体化処理」のこ とをアルミニウム(合金), アルミニウム鋳物のJIS では「焼きいれ」といっているのです。
析出効果・時効硬化処理
金属を焼入れしたのち、材質に合わせて適当な温度で一定時間放置し、硬化させる熱処理です。主に、ベリリウム銅やSUS631に行われます。
サブゼロ処理
「焼いれしたものをさらに、すぐにゼロ度、つまり0°C以下に冷やすものです。こうすると、残って いるオーステナイトがマルテンサイトになってもっとかたくなり、時効変形を防ぐ効果があります。 -80°Cくらいが適当といわれています。