シールドケースとは、電子機器を外部からの電磁波やノイズから守るための保護ケースのことです。電子機器が発する電磁波や外部からのノイズは、デバイスの正常な動作を妨げる可能性があり、特に高精度の機器や通信機器では大きな問題となります。シールドケースはこのような電磁波干渉(EMI: Electro Magnetic Interference)を防ぐために設計されており、デバイスの内部回路や部品を電磁波の影響から保護します。
シールドケースの役割は、電子機器から発生する不要な電磁波を外部に漏らさないことだけでなく、外部から侵入するノイズや干渉波から機器を保護することも含まれます。たとえば、精密な計測器や医療機器などでは、この「ノイズシールド」の効果が非常に重要であり、シールドケースはデータの正確性や機器の信頼性を維持するために不可欠な要素です。
シールドケースには、使用する素材や設計に応じて、異なるレベルのシールド効果が得られるものがあります。一般的に、アルミや銅などの導電性素材を使用することで高い「電磁波対策」効果が期待できます。また、ケースの形状や構造も、シールド効果を高める重要な要素です。
シールドケースには用途や材料によって様々な種類があります。それぞれの材質により、シールド効果やコストに違いがあるため、目的に合ったものを選ぶことが重要です。
パーマロイはニッケルと鉄を主成分とする合金で、非常に高い磁気透過率を持っています。その優れた磁気透過率と低周波から高周波までのシールド性能により、医療、通信、航空宇宙、半導体製造など、多岐にわたる分野で使用されています。特に精密機器や電磁ノイズ対策が重要な場面で効果を発揮します。
パーマロイ t0.3 |
パーマロイ t0.2 |
パーマロイ t0.2 |
パーマロイ t0.3 |
パーマロイ t0.2 |
銅はシールド効果が非常に高く、精密機器や医療機器など、高度な電磁波対策が求められる用途に適しています。効果が重要な場合には選ばれることが多い材質です。ただし、低周波に対するシールド効果は弱く、高周波向けのシールドケースに多く採用される傾向があります。
C1100 t0.5 |
C1020 t0.2 |
C1100 t0.2 |
ブリキは、鉄を基材として表面にスズをめっきした材料で、耐食性や加工性が高く、薄い金属シートとして幅広い用途に使用されます。高いシールド効果は求められず、加工性や材料費を抑えることを目的としたシールドケースに採用されます。
SPTE(ブリキ) t0.3 |
SPTE(ブリキ) t0.2 |
SPTE(ブリキ) t0.2 |
SPTE(ブリキ) t0.3 |
SPTE(ブリキ) t0.2 |
洋白は、適度な電磁波シールド効果と優れた耐食性・加工性を兼ね備えた素材です。特に、外部ノイズの影響を軽減したいが、高い磁場シールド性能が必要ない用途で採用されています。
洋白 t0.3 |
洋白 t0.2 |
洋白 t0.1 |
洋白 t0.2 |
アルミは軽量で耐食性に優れ、ノイズシールド効果も高いため、ポータブル機器に多く使用されます。
A1050 パンチング t0.3 |
A5052 t0.3 |
A1050 t0.5 |
A1050 t0.5 |
A1050 t0.8 |
シールドケースは、特に産業機器や高精度が求められる分野において重要な役割を果たしています。半導体装置や医療機器に加え、宇宙・航空関連機器でも、電磁波や外部ノイズの影響を最小限に抑えるために不可欠です。以下に具体例を挙げて、用途を詳しく説明します。
半導体製造では精密な処理が必要とされ、わずかな電磁波干渉が製品品質に影響することがあります。シールドケースは、クリーンルーム内で使用される製造装置や測定器を保護し、外部ノイズの影響を防ぎます。特に高周波ノイズが発生するプロセスや電源ユニット周辺での「ノイズシールド」として重要視されています。
医療機器は正確な測定結果や安定した動作が求められるため、外部の電磁波干渉を防ぐことが必須です。MRIやCTスキャナーなどの診断装置では、シールドケースが電子部品を保護し、精度を保ちながら患者への影響も防止しています。また、心電計やモニタリング機器も「電磁波対策」により外部ノイズの影響を防ぎ、安定した診断やデータ取得が可能です。
宇宙や航空関連機器は、極めて過酷な環境で動作し、外部からの強い電磁波や宇宙線の影響を受ける可能性があります。シールドケースは、衛星の通信機器や航空機の精密ナビゲーションシステムなどを保護し、安定した通信や制御を実現します。特に宇宙空間では、太陽フレアなどの高エネルギー粒子による影響も考慮する必要があり、シールドケースが電子機器の耐久性と信頼性を維持する上で欠かせない存在です。
これらの分野では、シールドケースの使用により、電磁波耐性を高め、機器の信頼性と精度を長期間にわたり維持することが可能です。
シールドケースを選ぶ際には、使用環境や必要な性能、そしてコスト面を考慮することが重要です。
屋外使用や高温環境で使用する場合には、耐候性や耐熱性の高いシールドケースを選ぶことが推奨されます。また、医療機器や精密機器にはより高いシールド効果を持つ材質を選ぶことが重要です。
高品質シールドケースは、電磁波干渉の影響を最大限に抑えることができ、特に精密機器や通信機器には適しています。「高品質シールドケース」や「コストパフォーマンスの良いシールドケース」というキーワードで比較することもおすすめです。ただし、形状や性能により条件が異なるため、機器に合わせたシールドケースの模索が必要です。
量産時には、少量製作よりも材料費のウェイトが多くなるため、予算に応じて、性能と価格のバランスが取れた材質を選ぶことが必要です。
シールドケースは、加工方法や加工技術によってシールド効果や耐久性に違いが出ます。以下はこだま製作所で行っている加工方法と技術です。
少量のシールドケース製作において、最も多く用いられる加工方法で、複雑な形状でない限りは既存の曲げ型で加工することができます。ただし、形状は箱曲げになり4隅に多少の隙間ができてしまいます。
>>精密板金加工について
高いシールド効果が必要な場合には、隙間を溶接して密閉することでシールド性能を向上させます。「シールドケース加工技術」として、品質を保つための重要な工程です。ただし、材質によっても溶接が困難な材質もあります。
>>スポット溶接技術について
精密な形状が求められる場合に使用される方法で、アルミや銅などの金属素材を正確に削り出します。強度が高く、精度が求められるシールドケースに適しており、隙間なく製作できることも特徴です。
>>精密切削加工について
薄い金属シートを型でプレスして形状を作る技術で、箱曲げ、絞り成形の両方が可能です。シールドケース製作の量産時によく利用される加工方法ですが、形状によっては簡易金型を用いて少量でも絞り加工を行うことができます。
>>精密プレス加工について
こだま製作所では小ロット〜中ロット(2000個程度まで)のシールドケース製作に特化しております。数量や形状に合わせて様々な加工方法を変えてニーズに合わせたシールドケースのオーダー製作にご対応しております。
シールドケース の製作に関するお問い合わせはフォームより(添付ファイルも出来ます)ご連絡ください。
鉄系 | SPCC(鉄)、SPTE(ブリキ)、SK(生・焼き入れリボン鋼) |
ステンレス系 | SUS304:BA、1/2H 3/4H・H・EH |
SUS301:1/2H・3/4H・H・EH | |
SUS316、SUS631、SUS430、SUS410 | |
ニッケル合金 | 78パーマロイ、42アロイ、インコネル、インバー |
銅系 | C1100P(タフピッチ銅) |
C2801(真鍮) | |
C5210P(りん青銅板二種)、C5210(バネ用りん青銅板) | |
C7521(洋白板二種)、C7701(バネ用洋白板) | |
C1700/C1720(バネ用ベリリューム銅) | |
その他 | チタン、チタンバネ、モリブデン |
弊社へのご質問の多い材質、またはご依頼いただく製品の、主流材質の性質を記載していますので参考にしてください。
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